「九条の会・わかやま」 68号を発行(2008年5月15日付)

 68号が5月15日付で発行されました。1面は、9条世界会議開催される、朝日新聞世論調査 憲法9条改正反対66%、九条噺、2面は、西谷文和氏講演の要旨、「県民大署名」駅前行動 です。
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[本文から]

「9条世界会議」開催される
幕張メッセに初日1万5千人


 憲法9条を世界の人々と考える「9条世界会議」が5月4日~6日、千葉・幕張メッセで開催されました。
 新聞報道によると、初日の4日は、9条を守ろうという市民らが主催者の予想を超えて集まり、満席となった会場には延べ1万2千人以上が入場し、3千人以上が入りきれない状態になりました。
 9条にエールを送る海外ゲストの発言が相次ぎ、北アイルランドのノーベル平和賞受賞者・マイレッド・マグワイアさんは「日本の平和憲法は、世界中の人々に希望を与え続けてきた。9条を放棄しようとする動きが日本にあることを憂慮している」と述べ、「国際平和ビューロー」元会長のコーラ・ワイスさんは「日本が〝自衛〟を拡大解釈すれば平和な国際社会はつくれない」と訴えました。第2次大戦後、GHQの一員として憲法起草に関わり、映画「日本の青空」にも登場したベアテ・シロタ・ゴードンさんは当時のエピソードを披露した上で「戦争放棄という9条の精神は、さまざまな国のモデルになると思う」と話しました。
 会場からあふれた人たちは近くの広場で、講演を終えたコーラ・ワイスさんらを囲み、集会を開きました。会議には海外から法律家団体やNGO代表など30カ国150人以上が参加しました。朝日新聞は3日間で2万2千人と報じました。

大阪にも8千人が集まる

 6日、「9条世界会議・関西」が大阪・舞洲アリーナで開催され、関西各地から約8千人が参加しました。和歌山からも貸切バス、自家用車、電車などで多くの人が参加しました。
 午前中のワークショップに引続き、午後からの全体会は、和歌山から参加した約30人の合唱団を含む約500人の、「ねがい」などの大合唱でスタートしました。
 開会挨拶に立った共同代表の松浦悟郎さん(日本カトリック正義と平和協議会会長)は「真の平和は軍事力や暴力によってではなく、非暴力による対話や相互理解によって、友をつくることによってのみ実現します。その確信こそが世界に平和のネットワークを広げることになります。それが9条を掲げることの意味ではないでしょうか。世代や思想、信条の違いをこえて一緒に行動する思いを新たにしましょう」と訴えました。
 幕張での世界会議が1万5千人の参加で成功したという報告、学生・留学生の「新世代9条トーク」の後、海外ゲストのスピーチが行なわれました。元GHQ民政局員のベアテ・シロタ・ゴードンさんはGHQの憲法草案づくりの裏話も交え、「日本の憲法はアメリカの憲法より優れたものですから、おしつけとは決して呼べません」と語りました。国際民主法律家協会会長のジテンドラ・シャーマさんは「9条は戦争を永久に(forever)に放棄する、戦力は決して(never)保持しないと極めて明確な宣言です。世界のあらゆる国が憲法の中に9条を持つことによってのみ戦争をなくすことが可能です」と訴えました。元米陸軍大佐のメアリー・アン・ライトさんは「イラク戦争を始めてからのアメリカは市民的自由がなくなり、自分たちの意見が政治に反映されないという大変な状況が生まれています。一旦、9条を手離せば日本にも同じ状況が起こります」と警告しました。
 子どもたちのパフォーマンス、小山乃里子さんと香山リカさんの対談、ソウル・フラワー・ユニオンのライブ演奏の後、共同代表・木戸衛一さん(大阪大学大学院)が「今日の熱い思いを胸に、明日から公正で平和な世界をつくるためにがんばりましょう」との閉会挨拶でエンディングとなりました。

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朝日新聞世論調査
  憲法9条 改正反対66%
  賛成の3倍に迫る


 3日の憲法記念日に合わせて発表した朝日新聞の世論調査結果では、憲法9条を「変えない方がよい」が66%にのぼり、「変える方がよい」の23%を大きく上回りました。これは、昨年の調査と比較して「変えない方がよい」は17ポイント増、「変える方がよい」は10ポイント減と、大きな差となっています。
 憲法全体では、「改正が必要」は56%ですが、その理由を聞くと、「新しい権利や制度を盛り込むべき」が74%(全体の42%)で、「9条に問題がある」は13%(全体の7%)、「自分たちの手で新しい憲法を作りたい」は9%(全体の5%)に過ぎません。また、「改正不要」の理由として52%(全体の16%)が「9条改正の恐れ」をあげています。
 つまり、国民の多数が充分に納得する新しい権利を追加するという意見も多いが、それを口実にした「9条改正」を危惧する意見も多いのです。いずれにしても、「新しい権利」と「9条改正」とをセットにして、「9条を変えて、戦争ができる国にする」ことには圧倒的多数が反対ということになります。

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【九条噺】
 かなり以前のことだが、しばらくの間、知人の会計事務所の手伝いをしたことがある。税務申告の実務に追われながら、いくつか大事なことを学んだ。例えば「累進課税」▼それまで日本の税制は少なくとももう少しまともな累進制だと信じ込んできた。税の累進制は、「福祉社会」の土台としても重要だが、当時すでにこの累進制が根本から崩されつつあったのだ。例えば市民税はかつて所得者層が10数段階に分けられ、所得が増えるに従い税率も増えるようになっていた。しかし、それがすでにわずか3段階に激減し、年間所得700万円以上はすべて同じ税率になっていた。国税もほぼ同様(4段階=但し07年度から6段階)。〝億万長者〟はいっそう潤った。こうした状況は、「小泉構造改革」を経て空前の格差社会につながった▼税の「源泉徴収制度」についても学んだ。税の天引きを当たり前に思ってきたが、実は先進国でも例が少ないのだという。わが国では、戦前、政府が戦費を安定して確保するためにヒットラーにまねて天引きを始めたのだという。「戦争国家の産物」ともいえるこの制度、勤労者には一見便利だが、他方で納税者としての感覚を薄める。それは増税路線を進める政府にはありがたいこと▼というわけで、「2匹目のどじょう」は後期高齢者医療制度の保険料天引きか。舛添厚労大臣は「高齢者の皆さんのため」というが、こういうのを「おためごかし」という。(佐)

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戦争はテロとの戦いという単純な理由で始まるものではない
フリー・ジャーナリスト、「イラクの子どもを救う会」代表 西谷文和 さん

 4月25日、青年法律家協会主催の「憲法を考える夕べ」で映像を写しての西谷さんの講演がありました。その概要をお伝えします。

 イラクの米軍はテロリストと一般市民を区別しない。動くものは撃つ。殺された人のほとんどは一般市民だ。米兵は沖縄で訓練し、イラクに来て、2週間で7千人も殺してしまった。米兵は殺人マシンになっている。米兵も犠牲者でアメリカに帰ればうつ病になっている。これがテロとの戦いの本当の姿だ。
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 砂漠を掘ると黒い袋が出てくる。遺体収納袋だ。1人2人ではなく、ざくざくと出てくる。アメリカ国籍を持つ米兵が死んだ場合は、遺体をアメリカに運んで葬式をする。しかし、民間の、金で雇われた貧しい国から来た傭兵もいる。南アフリカ、ネパール、フィジー、ペルー、ウクライナなどが多い。運悪く死ぬと遺体は時間があれば砂漠に埋め、時間がない時はヘリコプターから袋ごと投げ捨てる。
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 戦争が民営化されている。イラクの傭兵は3万人、米軍に次ぐ人数だ。民営化の本質は戦争が最も儲かるので民営化して大儲けをしようということだ。PMC(プライベート・ミリタリー・カンパニー=民間軍事会社)というものがあり、今や戦争は国に代わり企業が戦争をする時代になっている。正規軍より人件費が安く、死んだ時の保障や保険も必要がない。米兵が死ぬと、ブッシュ大統領には逆風になるが、傭兵は安上がりでブッシュ大統領は安泰だ。PMCは都合のいい会社で、イラクではPMCが米兵教育をしている。
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 PMCには親会社がある。親会社のカーライルは大金持ちの投資会社で、ブッシュ元大統領が役員をしており、ビンラディン一族も入っている。カーライルは87年に出来た企業で、9・11は01年。9・11以前からブッシュ一族とビンラディン一族は同じ会社の役員と大株主であり、大儲け仲間であった。
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 ペンタゴンの軍事予算がPMCに丸投げされる。PMCは貧しい国に行き、傭兵を集めて戦争をする。大きな収益は親会社に行く。ハリバートンは石油会社だが、PMCも持っており、大儲けをして、売上が全米で31位から5年間で7位になった。
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 巨大な戦費はどこから出たのか。日本政府は円高対策を口実に円でドルを買い、入ってくるドルで米国債を買わされている。米国は湯水のようにドルを使っても、ブーメランのようにドルが戻ってくる。戻ってきたドルで戦争を続けることができる。
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 戦争はテロとの戦いという単純な理由で始まるものではない。その裏には巨大な利権がある。しかし、何かのキッカケが必要で、それが9・11。それがあったから戦争を続けることができ、ブッシュ大統領とその周りが大変な大儲けをしたのだ。
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 イラク戦争は、大量破壊兵器も「アルカイダとの繋がり」もウソだった。戦争はウソで始まることが多い。戦争をして儲けてやろうという人がメディアを握っており、彼らに都合のよい映像しか流さないので、結果として騙されてしまう。我々は冷静に考えることが必要だ。
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 アメリカ型社会は格差社会だ。非正規雇用が増大し、ワーキングプアが増え、自衛隊はそこを狙う。徴兵制より戦争に行かざるをえない社会の方が都合がよい。これが伝わらないのはマスメディアに問題がある。東京発のメディアはダメだ。
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 草の根でやるより仕方がない。9条の会は7千を超え、あと一歩のところまで追い込んでいる。各人が得手の部分で力を合わし、発信し、広げることが大事だ。

当会ホームページから、会紙27号(07・03・30)「戦争&石油屋」と会紙36号(07・05・30)「九条噺」もご参照ください。

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「県民大署名」駅前行動  憲法記念日の3日、JR和歌山駅前で、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の呼びかけで「県民大署名駅前行動」が行われました。約50名が参加し、1時間余りで271筆の署名が集められました。マスコミも、和歌山放送、朝日新聞、読売新聞の3社が取材をしました。

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(2008年5月16日入力)
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